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共同研究事例 CASE02



佐賀大学との共同研究によって生まれた
巨峰ドレッシング「藤ざくら」

店頭で目にする美しく色づいた巨峰。そんな市場に出回る商品の陰で、収穫間際になっても色がつかず「規格外」として廃棄される巨峰が多く存在している。

「規格外」の巨峰も収穫までの手間暇は店頭で販売される巨峰と同じだが、見映えの問題で市場単価が低く廃棄するしかないのが現状だ。

この現状に疑問を持ち、規格外の巨峰を加工品として生まれ変わらせるべく立ち上がったのがROC IA SAGA合同会社の井手代表だ。井手代表は元々ブドウ農家を営んでおり、規格外巨峰の廃棄に頭を悩ませていた。そんな中、母校である佐賀大学の恩師の元を訪れたことがきっかけで共同研究による巨峰ドレッシング「藤ざくら」を開発することとなる。一人の「ブドウ農家」が産学連携によって農家の課題を解決するに至った過程とはーー

井手代表に共同研究の道のりを振り返っていただいた。

プロフィール
井手 一郎
2017年に家業であるブドウ農家に就農。2019年から開始した産学連携による商品開発の経験を経て2020年にROC IA SAGA合同会社を設立し代表に就任。

まず、共同研究に⾄った背景を教えてください

2017年にブドウ農家を継いで日々栽培に取り組む中、美味しい巨峰が収穫できる一方で収穫間際になっても色がつかない規格外の巨峰が出てしまうという問題に直面していました。

これらの巨峰は規格外ということもあり、手間暇がかかる割に値段が安く、自分たちで消費するか廃棄するしかないのが実情です。

こういった状況に疑問を持つ中、農業者が農産物の生産だけでなく、製造・加工にも取り組む"六次産業化”がブームであったこともあり、規格外の巨峰を使った加工品を作るという課題の解決策を模索し始めました。

模索し始めたのはいいものの、当時はどのような方法で解決すべきかが全く分かりませんでした。悩んだ末に農学を学んだ母校の佐賀大学の恩師に相談することにしました。

共同研究先として佐賀大学を選んだ経緯を教えてください

佐賀大学の恩師に相談し、恩師から佐賀大学のリサーチ・アドミニストレーター(URA)を紹介していただいたのがきっかけです。まずURAに自分が直面している課題と課題の解決策としてブドウを使った加工品を作りたいと考えていることを伝え、ディスカッションするところから始めました。

共同研究が本格的にスタートする6ヶ月ほど前からURAとディスカッションを重ねていたのですが、議論を進める中で世の中にはブドウを使った加工品は多数あれど、せっかく作るのであればまだ誰も作っていない商品にしたいと思い至り、ブドウを使ったドレッシングを開発することに決めました。

私自身、共同研究が初めてということもあり、商品開発の過程で大学側にどのように協力していただけるかが分からなかったため、URAと議論しながら連携方法を明確化していきました。議論の結果、大学側には規格外を含む生産したブドウの成分分析及び開発するドレッシングの味覚分析をお願いすることに。それと同時に、教育視点で高校とも連携できないかと考えていたこともあり、佐賀農業高校の高校生にドレッシングの試作作りやパッケージデザインでご協力いただくことになりました。

共同研究の開始から完了までにどのような工程を辿ったのか教えてください

共同研究の手順

最初に生産しているブドウの成分を大学側で分析していただいたのですが、分析の結果、規格外のブドウは正品と同様に糖度が高く、商品の原料として優れているという結果が出たんです。

この成分結果を追い風に、次のステップでは佐賀県の醤油メーカー様にもご協力いただきながら、高校生にドレッシングの試作品を作成してもらいました。その後、できあがった試作品を大学側で分析してもらい、優位性のある成分の洗い出しを行いました。

共同研究契約締結までに掛かった期間は1ヶ月、共同研究開始から完了までに掛かった期間は7ヶ月です。契約締結前に分析内容を私と大学で議論していたこともあり、全体を通してスムーズに進めることができたと思います。

共同研究が開始してから⼤学側との議論はどのように、どれくらいの頻度で行っていましたか?

共同研究の契約締結前の段階から、URAと年間計画や実施内容、目指すべきゴールなどを議論していました。多いときは週1ペースで議論していたと思います。共同研究内容の形が見えてきた段階でテーマにマッチする研究者を紹介してもらったので、研究者との議論よりはURAとの議論が多かったですね。

URAもさまざまな案件を抱えていらっしゃるので、案件によって関わり方は異なると思うのですが、私のような農家との共同研究は珍しかったようで、事例の一つとして参考になることから深く関わっていただけたのではないでしょうか。

共同研究が開始した後の大学側や高校側との議論については、私はできるだけ対面で実施するようにしていました。直接会って話すことで温度感を正確に把握できますし、ちょっとした認識のズレなども起きづらいと思っています。

共同研究で苦労された点や、今後に活かせそうな気づきはありましたか?

農家の通常業務にプラスする形で共同研究プロジェクトを進めていたので、業務の合間を縫って関係各所に訪問するのは大変でしたね。時間のやりくりに苦労しました。

また、今回のプロジェクトは「共創」であるものの、主体となるのは私です。そのため、私が動かなければプロジェクト自体が動かないということを痛感しました。プロジェクトのゴール設定はもちろんのこと、ゴールに至るまでのプロセスや企画など、自分自身がどうしたいのかを言語化し、自分が中心となって他者を巻き込んでいく必要があると感じました。

共同研究によって実感したメリットや得られた成果を教えてください

開発したドレッシングを味覚分析装置で成分分析したことで、ドレッシングに「さわやかな食味・あっさりとした味わい・塩分控えめ」という根拠を持った特徴づけをすることができました。データとしての根拠があることにより、商談会での評価も高かったと思います。

また、この産学連携プロジェクトは農家視点の「共創」の取り組みとして評価され、「さがラボチャレンジカップ2020優秀賞(県知事賞)」を受賞しました。受賞により多くのメディアで取り上げられるなど、大きな反響をいただいています。

今回の佐賀大学との産学連携プロジェクトはいわば「0→1の商品開発」。このプロジェクトを通して、共同研究を起点とした商品開発のプロセス全体を体感できたことは私にとって大きな学びになったと思っています。この経験を経て、本業として産学連携による商品開発に取り組むべく2020年にROC IA SAGA合同会社を設立しました。今後は培ってきた経験を糧とし、農家視点を軸に教育機関と企業のより良い「共創」を生み出す存在となれるよう、邁進していきたいと思います。

【まとめ】大学との共同研究で得られたメリット・成果

  • 開発したドレッシングに根拠を持った特徴づけをすることができた
  • 共同研究プロジェクト自体が評価され「さがラボチャレンジカップ2020優秀賞(県知事賞)」を受賞した
  • 共同研究を起点とした「0⇒1の商品開発プロセス」を体感できた
  • 共同研究の経験が会社の設立へとつながった
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※この記事は2024年に取材しました